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7/19読書会「卵」(三島由紀夫)活動報告

今回の読書会について

担当は清水。扱った作品は「卵」。三島由紀夫によるコント。登場人物たちの名前がブ仏教の五戒から取られていて、その意味のままの人物像であるところからもそのコントのノンセンスさが伝わる。非常によくまとまっていて面白い逸品。

担当からの報告 

「卵」は三島由紀夫という名を聞いて思い浮かべるような小説群の陰鬱さとはかけ離れた短篇である。「潮騒」とも「金閣寺」とも違う。「卵」はまったくのコントである。五人の学生がやりたい放題暴れまわっていたら卵たちに捕まって裁判にかけられるが、フライパン型の裁判所をひっくり返して卵たちを割り、脱出するというもの。荒唐無稽極まりない作品のように見えるが、三島らしい丁寧なキャラクターの作り方や整然とした物語展開は健在である。その上、「アリス」のようなノンセンス的要素(論理、数など)を的確に描いていることも見てとれる。作者本人が「ノンセンス」と言うだけのことはある。また、三島にとってひとつのテーマであった「戦後」という時代についても、この作品との関連の可能性を見出だせそうではあった(三島自身はただの「ノンセンス」であると言ってはいるが)。
いずれにせよ、三島作品の最たる特徴である「几帳面さ」が十分に読み取れる作品であった。

次回の読書会予定

未定。