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5/16読書会「マダー・タング」(ブライアン・エヴンソン)活動報告

今回の読書会について

担当は清水。扱った作品は「マダー・タング」(原題 : ‘Mudder Tongue’)。短編集『遁走状態』(原題 : ‘Fugue State’)、新潮クレスト・ブックス、2014所収。思った言葉と違う言葉を喋ってしまう症状に見舞われたシングルファザーの教授が自殺しようとするまでを冷静な筆致で描いた小品。単行本で18頁。読書会時間は1時間30分。以下、担当の報告。

担当からの報告

自らの発話をコントロールできなくなった父親と娘のハートフルな物語は予想以上に言語にまつわる根源的な問題を抱えていた。主人公の意味のわからない発言の意味をなんとなく汲み取れてしまう周囲の人間が描かれるが、それは無意識に文脈を理解してしまう人間の姿を描いているのではないか。言葉、言語というものについて今一度考えよと命じられている気がする。加えて、ノンセンスに接続しうる様々な細部と信頼のおけぬ話者。「言葉に呑まれ」てしまっている我々に鋭い批判を叩きつけるような、そんなエヴンソンの思想が見え隠れする秀作であると断言できよう。(清水)

 

次回の読書会

担当:佐藤

作品:Tobias Wolff, ‘Bullet in the Brain’, OUR STORY BEGINS, Bloomsbury: London, 2009 原書で7頁ほどの小品。不条理コメディを抒情的に終わらせる逸品。

詳細:5/26(月)開催。場所E439。時間は18:30から。開催時間は1時間の予定。邦訳は配布予定。サークル外で参加希望の人は邦訳を事前に渡すのでお問い合わせから連絡を。